田中史子のつぶやきコラム

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2018.4.3

財産分与と慰謝料請求の相殺

一般に、債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は相殺をもって債権者に対抗することができないとされています(民法509条)。

これはどういうことかというと、例えばAさんがBさんに20万円を貸していて、Bさんがお金を返さないのに腹をたてたAさんがBさんに暴力を振るい、Bさんに20万円の慰謝料を支払わなければならないとします。その場合、Aさんが暴力を振るったことは、「不法行為」にあたりますので、AさんはBさんに対し、慰謝料20万円を、貸したお金20万円で相殺することができず、Bさんが20万円を返してくれなくても、慰謝料20万円は支払わなければならないということになります。もちろんBさんは、20万円を返さなくてもよいということではありませんが、AさんはBさんに対し、相殺ではなく、現実に20万円を支払わなければならないということです。

では、夫が妻に対し、暴力を振るったことが原因で離婚することとなり、裁判で離婚の慰謝料が100万円と判断されたが、夫婦の財産は妻の名義であったため、妻から夫に対し、400万円の財産分与をすることが命じられた場合、妻は夫が支払うべき100万円の慰謝料を、400万円から差し引いて、300万円を支払うということは可能でしょうか。

これについては、不法行為を行ったのは夫の方なので、妻の側から相殺を主張し、夫の支払うべき慰謝料を差し引いた額を支払うことができます。一方、夫の方からの相殺の主張はできないということになります。

なお、双方の過失による交通事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間において、相殺は許されないとした最高裁の判決があります(昭和49年6月28日最高裁判決)。しかし、同一の交通事故で双方に物損が生じたような場合に、相殺を認めないとすると、一方当事者が支払いをしたのに、もう一方の当事者が支払いをしない場合、不公平な結果となってしいまいます。

そこで、平成29年の民法改正(本日現在、まだ施行はされていません)において、対象となる不法行為債権を「悪意による」ものと、「人の生命又は身体の侵害」によるものに限定しました。したがって、過失の交通事故による物損は、対象にはならなくなります。

離婚で慰謝料が認められた場合においても、原因が暴力ではなく、また「悪意によるもの」と認められない場合であれば、今後、財産分与との相殺が認められる場合も生じる可能性があると思います。