田中史子のつぶやきコラム

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2018.4.4

婚姻費用分担と財産分与

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を負担します(民法760条)。

そのため、夫婦が別居していても、離婚までの間は婚姻費用の分担を求めることができます。例えば、妻が子どもを連れて別居した場合、妻は夫に対し、自分と子どもの生活費を請求することができます(その額については、夫と妻のそれぞれの収入や、子どもの人数、年齢によって異なります。また、妻の収入が夫の収入より多く、夫が子どもを養育している場合には、妻が夫に生活費を支払う場合もあります)。

婚姻費用の支払い義務のある夫(もしくは妻)が、婚姻費用を支払ってくれない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担の調停または審判を申し立てることができます。ただ、通常は、まず調停を申し立てて話し合いを行い、話し合いがまとまらない場合に、審判に移行することになります。

ただ、別居後、婚姻費用について調停・審判で婚姻費用の額が決まるまでには、長期間かかる場合もあります。そのような場合、過去に遡って婚姻費用を支払ってもらうことができるのでしょうか。

この点、家庭裁判所の審判においては、当事者間の公平の観点から、調停申立時にまで遡って婚姻費用の分担を認めることが多いと思います。ただ、別居時より、当事者間で婚姻費用を請求していたという状況が認められれば、別居時に遡って認められることもありえます。

それでは、婚姻費用分担請求についての調停や審判が長引き、結果がでないまま、先に離婚が成立した場合、財産分与の請求の中で、婚姻費用の精算を求めることができるでしょうか。

この点について最高裁判所は、「裁判所は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の精算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解するのが相当である」としています(昭和53年11月14日最高裁判所判決)。

すなわち、離婚時点までに、未払いの婚姻費用がある場合、財産分与においてその精算をすることも可能であるということになります。

しかし、婚姻費用というのは毎月の生活費ですから、出来るだけ早く審判の結果を出してほしいものです。

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