田中史子のつぶやきコラム

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2018.3.29

老人性認知症と離婚

夫(もしくは妻)が老人性認知症になった場合、そのことを理由として離婚することはできるのでしょうか。

この点、妻がアルツハイマー病にかかり、特別養護老人ホームに入所している事例において、夫からの離婚請求を認めた裁判例があります(平成2年9月17日長野地方裁判所判決)。

この事例は、夫が家事や、妻の介護を行っていたが、夫一人では妻の看護が十分にできなくなったことから、勤務先を退職して実家に帰り、夫の母親とおもに介護を行っていたところ、民生委員の尽力により、妻が特別養護老人ホームに入所することができたというものです。妻は、入所当初から自力ではベッドの上に起き上がることができず、その後、夫が知り合いであるということはわかっても、夫であることはわからなくなってしまっていました。夫は、妻の入所後、親族が知人の勧めもあって再婚を考えるようになり、離婚訴訟を起こしましたが、離婚後も妻への若干の経済的援助や面会をすることを考えている、という事案です。

これに対し、裁判所は、妻の病気の性質等から、民法770条1項4号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」に該当するか否かについては疑問が残るとしました。しかし、本件の婚姻関係は、妻がアルツハイマー病にかかり、長期間にわたり、夫婦間の協力義務を全く果たせないでいることによって破綻していることが明らかであるとし、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるとして、離婚を認めました。

この事案においては、離婚すれば、妻の特別養護老人ホームの費用は全額公費負担となることも理由としています。

老人性認知症の夫(もしくは妻)に対する離婚請求は、その認知症が夫婦としての精神的交流が出来ないほど進行しており、これまで誠実に介護を行ってきていると言う実績があり、公的な保障等により、離婚後も介護を必要とする夫(もしくは妻)の生活が成り立つように手当をしていれば、認められる場合があるということになります。逆に言えば、夫(もしくは妻)が認知症にかかったからといって、直ぐに離婚が認められるわけではなく、離婚申立に至るまでの間、誠実に介護を行い、今後の夫(もしくは妻)の生活が成り立つような手当てをした上でなければ、離婚は認められないと言えます。