田中史子のつぶやきコラム

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2023.8.23

婚姻費用分担義務について

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担することとなっており(民法760条)、夫婦が別居していても、婚姻費用の分担義務はあります。
では、夫婦の別居したことについて、主として責任がある妻(もしくは夫)からの婚姻費用分担請求は認められるのでしょうか。

この点、大阪高等裁判所平成28年3月17日決定は、「夫婦は、互いに生活保持義務としての婚姻費用分担義務を負う。この義務は、夫婦が別居しあるいは婚姻関係が破綻している場合にも影響を受けるものではないが、別居ないし破綻について専ら又は主として責任がある配偶者の婚姻費用分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地からして、子の生活費に関わる部分(養育費)に限って認められると解するのが相当である。」としています。
これは、例えば、妻の不貞行為等が理由で別居した場合、妻から夫への婚姻費用分担請求は、養育費の部分についてのみしか認められない場合があるということになります。

なお、婚姻費用分担義務については、婚姻届は提出したものの、一度も同居したことがない夫婦において、同居を拒んでいる妻からの婚姻費用分担請求が認められるのかが問題となった事例があります(東京高等裁判所令和4年10月13日決定)。

この事例の原審では、「当事者間の婚姻は余りに尚早の婚姻届出であって、本件において当事者間の夫婦共同生活を想定すること自体が現実的ではない」「当事者間で婚姻が成立しているとはいえ、通常の夫婦同居生活開始後の事案のような生活保持義務を認めるべき事情にはない」等として、夫の婚姻費用分担義務を否定しました。
しかし、高裁では、「(婚姻費用分担義務は)婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力関係の存在という事実状態から生じるものではない」とし、婚姻の届出後同居することもないままに婚姻関係を継続して婚姻関係が破綻したとしても、法律上の扶助義務が消滅するということはできない、として原審の判断をくつがえし、夫の婚姻費用分担義務を認めています。






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