田中史子のつぶやきコラム

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2021.12.18

財産分与の基準時

財産分与の基準時は、一般的には別居時とされています。
清算的財産分与の対象となる財産は、「当事者双方がその協力によって得た財産」(民法768条3項)であり、夫婦が婚姻中に取得した財産は原則として夫婦が協力して形成したものであると考えられます。
しかし、別居すれば、通常は夫婦の経済的協力関係がなくなると考えられるため、財産分与の基準時は、一般的に別居時とされているのです。

では、家庭内別居の場合はどのように考えればよいのでしょうか。
この点、東京家裁平成22年6月23日審判の事例においては、以下のように判断されています。
この事例は、平成13年から、重要な問題について筆談で話をする以外は夫婦でほとんど口をきかなくなり、平成18年には、妻が離婚調停を申し立てて不成立となり、平成19年に離婚調停を申し立てたが、夫が自宅を出て別居したのは平成20年であったというものです。
審判では、夫婦の婚姻関係は遅くとも平成19年頃には破綻していたと認めましたが、それ以後も平成20年の別居時まで、双方は従前どおり同居生活を送っていたということから、別居の日の直前の月末を財産分与の基準時としました。
ほとんど口をきかず、夫婦仲が極めて悪くても、夫婦の経済的協力関係は続いていたと判断したものと思われます。

これに対し、別居はしているが、別居後も従前と同様に妻が夫の給与を管理し、生計を同一としている場合には、別居時が財産分与の基準時とならないこともあります。
財産分与の基準時は、個々の夫婦の経済的協力関係の状況に応じ、個別の判断となりますので、注意が必要です。

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