田中史子のつぶやきコラム

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2018.4.5

借地上の住宅の財産分与

借地上の住宅を財産分与する場合、どのような問題があるでしょうか。

例えば、Aさん所有の土地を夫が借りて、その土地上に夫名義の自宅を建てている場合、Aさんと夫との間で、土地の賃貸借契約が結ばれていることになります。ところが、夫が離婚に際して、妻に自宅を財産分与して、自宅の登記名義を移転すると、Aさんは妻に土地を貸していることになります。その場合、賃借権の無断譲渡であるとして、Aさんから賃貸借契約を解除されることがあるのか、という問題です。

民法612条1項では、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」とされており、これに違反して、第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときには、賃貸人は、契約の解除をすることができるとされている(同条2項)ため、問題となります。

上記の条項については、賃借人が賃貸人の承諾なく、第三者に賃借物の使用・収益をさせた場合でも、賃借人の当該行為が、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときには、賃貸人は契約解除をすることができないとされています(昭和28年9月25日最高裁判決)。

したがって、夫婦が自宅に住んでいたが、離婚することになり、財産分与により妻が自宅を取得したというような場合には、通常は、「賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある」といえ、契約解除は認められないと言えます。

昭和44年2月24日最高裁判決においても、土地の所有者が、夫婦が借地上の自宅に居住し生活を共にしていたことや、自宅の登記簿上の名義は夫であるが、真の所有者は妻であることを知っていたこと、及び離婚後、夫が自宅から出て行ったと言うこと以外、土地の使用状況の外形には何ら変わるところがないことを理由として、「賃借権の譲渡は、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合にあたる」とし、土地所有者からの賃借権の解除を認めませんでした。

ただ、事案の内容によっては、無断で賃借権を譲渡したことが背信的行為と認められる場合もないとはいえないので、事前に土地所有者と協議をし、承諾を得ておく方がよいでしょう。土地所有者と協議をしても、土地所有者の承諾が得られない場合には、借地借家法19条により、土地賃借権譲渡許可の裁判を申し立てる方法があります。