田中史子のつぶやきコラム

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つぶやきコラム

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2023.2.27

財産分与において特有財産の資料がない場合

財産分与は、結婚から別居時までに夫婦が協力して得た財産を分ける、というものです。
親族からの贈与・相続により取得した財産や、結婚前からの貯蓄は、夫婦が協力して得た財産ではなく、特有財産ということになります。
特有財産は、財産分与の対象とはならないのが原則です。
例えば、夫(もしくは妻)の別居時の預金2000万円の中に親からの贈与800万円が含まれているのであれば、贈与金を差し引いた1200万円が財産分与の対象になり、この2分の1の600万円を妻(もしくは夫)に分与するということになります。

もっとも、特有財産の存在を審判や裁判で主張するためには、特有財産であることを示す資料とともに、その財産が別居時まで残っていることを示す資料が必要です。
上記の例でいえば、夫(もしくは妻)の特有財産800万円が別居時に残っていることを示すことができない場合には、預金2000万円全額が財産分与の対象になり、贈与の800万円を差し引く計算はしない、ということになります。

この点、預金を相続したことは確かだが、その相続財産が財産分与の基準時に残存していたことを裏付ける資料がない、という事例において、特有財産として財産分与において考慮するかどうか問題になった事例があります。
この事例では、高等裁判所での抗告審において、相続預金を取得していた事情を合理的な範囲で考慮し、財産分与を行いました(東京高等裁判所令和4年3月25日決定)。
特有財産の主張においては、明確な資料の提出が難しいことが多くありますが、経緯等も含めて丁寧に説明していくことが必要であると思います。

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