田中史子のつぶやきコラム

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2025.7.11

有責配偶者からの離婚請求について

夫婦関係が破綻しているといえる場合であっても、有責配偶者(自ら夫婦関係を破綻させた者)からの離婚請求は認められないというのが、かつての判例でした。

しかし、昭和62年の最高裁判所の判決では、それまでの考えを変更し、有責配偶者からの離婚請求であっても、夫婦関係が破綻していれば、別居期間が相当の長期間に及んでいることや、夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと等の一定の要件のもとで、離婚が認められる場合があるとしました。

ただ、上記最高裁判決によっても、有責配偶者からの離婚請求が「信義誠実の原則」に反するときには、離婚請求は認められません。

この点、別居中の夫が、離婚調停が不成立になるや、妻子に対する婚姻費用の支払いを停止し、婚姻費用を支払うように命ずる審判が確定しても、婚姻費用の支払いをしなかった、という事例において、夫からの離婚請求を認めなかった裁判例があります(東京家庭裁判所令和4年4月28日)。
上記裁判例では、別居期間が4年6か月を超え、婚姻関係が破綻しているとされました。
しかし、「一方的に被告との離婚を実現させようとした原告が、被告との別居に踏み切るにとどまらず、被告に対して婚姻費用の分担義務を負っていることを顧みることなく、兵糧攻めともいうべき身勝手な振る舞いを続け、婚姻関係の修復を困難たらしめた」とし、夫からの離婚請求は「信義誠意の原則」に反するとしました。
夫は、妻子の居住する家を、妻に賃貸したと主張して、賃料請求訴訟を提起したことも、夫が「兵糧攻め」によって、一方的な離婚の要求を受け入れさせようとした、という判断につながっていると思います。

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