田中史子のつぶやきコラム

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2021.1.8

扶養的財産分与について

離婚の際の財産分与には、夫婦が共同して築いた財産を清算するための清算的財産分与のほかに、離婚後の相手方の生計の維持を目的とする扶養的財産分与があります。

清算的財産分与は、夫婦で築いた財産がある以上は行うことができます。
一方、扶養的財産分与は、離婚後に元夫婦の片方が生計を維持することが困難な場合に認められるものです。
本来は、離婚後は、元夫(もしくは元妻)はそれぞれ経済的に自立して生活することになりますが、それが困難な場合に、元夫(もしくは元妻)の財産状況、生活状況、収入等を考慮し、扶養的財産分与が認められることがあります。

この点、名古屋高裁平成18年5月31日決定では、以下の通り述べられています。
「夫婦が離婚に至った場合、離婚後においては各自の経済力に応じて生活するのが原則であり、離婚した配偶者は、他方に対し、離婚後も婚姻中と同程度の生活を保証する義務を負うものではない。しかし、婚姻における生活共同関係が解消されるにあたって、将来の生活に不安があり、困窮するおそれのある配偶者に対し、その社会経済的な自立等に配慮して、資力を有する他方配偶者は、生計の維持のための一定の援助ないし扶養をすべきであり、その具体的な内容及び程度は、当事者の資力、健康状態、就職の可能性等の事情を考慮して定めることとなる。」

上記の事例においては、双方の経済状況、生活状況を考慮の上、扶養的財産分与として、3人の子どもを育てている元妻に対し、長男が小学校を卒業する時期(離婚から約8年経過した時期)まで、元夫名義のマンションに無償で住むことのできる権利を認めました。
上記のような判断となったのは、元妻が元夫からの離婚要求をやむなく受け入れたのは、元夫から一定の経済的給付を示されたからであり、その中には、元妻が子どもを養育する間は家賃なしで現在居住しているマンションに住めることが含まれていたことが重視されたからだと思われます。
また、元妻は、マンションの購入費用を含めて合計1000万円近い持参金を婚姻費用として提供したが、夫婦共有財産としては残っていないことも考慮されています。


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