田中史子のつぶやきコラム

田中史子の
つぶやきコラム

田中史子が日々の弁護士業務に
おいて感じていること、
考えていることについて
お伝えさせていただきます。

※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。

※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。

TOP > 田中史子のつぶやきコラム > 共有物分割請求と財産分与

2022.4.8

共有物分割請求と財産分与

離婚にあたって、自宅不動産をどちらが取得するのかは、財産分与において協議することになります。
しかし、一方で、不動産が共有となっている場合、各共有者はいつでも共有物の分割請求ができることになっています(民法256条)。
そこで、夫婦間で、財産分与によらずに共有物分割請求ができるのかが問題となります。

この点、自宅を出て別居している夫が、子と共に自宅に居住している妻に対し、自宅不動産の共有物分割を求めた事案があります。
1審の判決は、夫婦の様々な事情を考慮しながらも、原則通り共有物分割を認め、自宅を競売し売却金を2分の1ずつ分割するように命じました(平成16年12月13日大阪地方裁判所堺支部判決)。
しかし、上記判決の控訴審(平成17年6月9日大阪高等裁判所判決)においては、夫の請求は権利の濫用であるとして、原判決は取り消され、共有物分割は認められませんでした。
その理由としては、①本件不動産は、夫婦の実質的共有財産であり、本来は、離婚の際の財産分与の手続きその処理が委ねられるべきであり、その場合には妻が本件不動産を単独で取得することになる可能性も高いこと、②本来、夫には妻や子の居所を確保する義務があるが、夫は相当額の収入を得ているにもかかわらず、婚姻費用の分担すらほとんど行わず、妻を苦境に陥れていること、③本件不動産が競売になると、妻子が自宅を出ていかなければならず、妻の年齢や病気等を考えると、経済的にも妻は一層苦境に陥ることになること、④夫に、どうしても負債整理のために本件不動産を早期に売却しなければならない理由も認められないこと等があげられています。

夫婦共有の不動産について、共有物分割請求が認められるかどうかは、双方の具体的な状況から、請求が権利濫用に当たるかどうかを判断しているといえます。

  • プロフィール
  • お客様の声