田中史子のつぶやきコラム

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2018.4.30

夫婦間の暴力

夫婦間の暴力は、離婚原因となります。離婚原因を規定した民法770条には、暴力が離婚原因となることは明記されていませんが、夫(もしくは妻)に対する暴力は、「離婚を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたります。

また、夫婦間の暴力は、「離婚原因」となるだけでなく、不法行為にもあたります。したがって、夫(もしくは妻)の暴力によって婚姻関係が破綻した場合、妻(もしくは夫)は、離婚の慰謝料を請求することができるとともに、暴力による慰藉料やその他の損害についても請求することができます。

この点、夫から暴力を受けた妻が、椎間板ヘルニア等の傷害を負い、後遺症が残った事案において、離婚慰謝料としての350万円とは別に、暴力による傷害や後遺症に対する慰謝料として、1700万円以上の損害賠償を認めた判例があります(平成12年3月8日大阪高等裁判所判決)。夫の暴力により妻に発生した後遺症の程度から、妻が労働能力の4割を喪失したものと認定し、入通院したことや、後遺障害が残ったことの慰謝料とともに、労働能力喪失により失った利益の損害賠償を認めたのです。

これに対し、上記高裁判決の原審である神戸地方裁判所は、本件暴行による損害賠償については、夫婦間の損害賠償であること、交通事故の損害賠償のように保険制度が完備していないことから、交通事故の損害算定に比し、低額の損害算定としていました。

しかし、大阪高裁は、「夫婦間における暴行が、その原因において、相手方が暴行を挑発したなどの特段の事情がある場合は格別、単に夫婦関係があることのみから損害額を低く算定すべきであるとはいえないし、また保険制度が完備しているか否かで損害額の算定を換えることは、交通事故の場合、加害者が任意保険に加入しているか否かで損害の算定を換えることと同じで明らかに不合理である」とし、夫婦間の暴力の場合であっても、交通事故の損害算定より低額とすべきではないとしています。

交通事故による損害が過失であるのに対し、暴力は故意によるものですから、暴力が夫婦で行われたからと言って、交通事故の場合より低額の損害賠償額になるのは、明らかにおかしいと言えるでしょう。

なお、上記大阪高裁判決は、夫が特殊な資格を持ち、多額の収入を得ていたという事情があり、財産分与については、妻の寄与度を約3割としています。