田中史子のつぶやきコラム

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2018.1.8

親権者の決定における面会交流の許容性

離婚時に子どもの親権者の適格性を判断するにあたり、離婚後の面会交流の許容性を判断基準の一つとする考え方があります。

子どもにとっては、父親と母親が円満に生活し、両親からの共同監護を受けることが最もよいことです。しかし、夫婦関係が悪化した状態になると、夫婦が一緒に生活することがかえって子どもの健全な成長にとってはよくない場合もあります。そのため、やむなく離婚することになった場合、子どもが、離れて暮らすことになった親とも、継続的に交流の機会を持つことは非常に重要です。

ただ、面会交流が非常に重要であるといっても、離婚に至る経緯や子どもの状況によっては、離婚後、直ちに面会交流をすることが適切ではない事例があるのも事実です。

したがって、一般的には、面会交流に拒否的である、ということだけで、親権者としての適格性がないとされることはあまりなく、他の親権者の適格性の判断基準とともに、補充的に考慮されることになると思います。

例えば、親権者の適格性に関する他の基準(監護の継続性の基準や子の意思尊重の基準等)において、父親と母親の双方が同程度に評価される場合に、補充的に面会交流の許容性を考慮し、より面会交流を相手方に自由に認める方の親が親権者と決定される、ということは考えられます。

親権者変更にあたって、面会交流の許容性を考慮した審判としては、福岡家庭裁判所平成26年12月4日審判があります。

親権者である母親が、離婚の際に決めた調停条項に基づく面会交流を行わなかったため、監護権は母親に残したままで、父親に親権者を変更した事例です。

この審判においては、父親が、調停や履行勧告などの法的手段や、面会交流支援機関(FPIC)を利用するなどして、面会交流の再開に向けて取り得る手段を尽くしてきたにもかかわらず、母親が面会交流に拒否的な態度を取り続けたため、父親において、「親権者変更を求める以外に、面会交流が実現しない現状を改善する手段が見あたらない」としました。

そして、「親権と監護権とを分属させる積極的な意義が認められる」として、監護権のみを母親に残し、親権者を父親に変更したのです。

しかし、母親が監護者である状況が継続する以上、父親に親権者変更しても、それだけで、子どもに負担のない面会交流が実現できるようになるわけではありません。母親が、裁判所で決定された面会交流の条件に表面的に従ったとしても、母親の面会交流に拒否的な気持ちが子どもにわかれば、子どもは父親と面会交流することに戸惑いを感じることになってしまうからです。ただ、裁判所は、本事案において、子どもの最大限の利益を考えたぎりぎりの判断として、親権者のみを父親に変更することにしたのでしょうね。

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