田中史子のつぶやきコラム

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2018.4.2

財産分与と慰謝料

財産分与には、夫婦が婚姻生活により共同して築いた実質的夫婦共同財産の精算の要素(精算的財産分与)と、離婚によって生活に困窮する相手方に対する扶養の要素(扶養的財産分与)があります。

では、財産分与に、夫婦の婚姻生活を破綻に導いた相手方に対する損害賠償請求権の要素(慰謝料的財産分与)を加えることができるでしょうか。

この点、財産分与の判断に際して、「一切の事情」(民法768条3項)を考慮するので、夫(もしくは妻)の有責行為により離婚をやむなくされ、精神的苦痛を被ったことに対する給付を含めて財産分与の額及び方法を定めることもできるとされています。

昭和46年7月23日最高裁判所の判決においては、「裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方における一切の事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であって、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被った精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることもできると解すべきである。」としています。

では、上記のように、損害賠償の要素をも含めて財産分与の額が定められたときには、財産分与とは別に慰謝料請求を行うことはできないのでしょうか。

この点、上記の最高裁の判決においては、「財産分与によって請求者の精神的苦痛がすべて慰藉されたものと認められるときには、もはや重ねて慰謝料の請求を認容することはできないものと解すべきである。しかし、財産分与がなされても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解せられないか、そうでないとしても、その額及び方法において、請求者の精神的苦痛を慰藉するには足りないと認められるものであるときには、すでに財産分与を得たという一時によって慰藉料請求権がすべて消滅するものではなく、別個に不法行為を理由として離婚による慰藉料を請求することを妨げられない」としています。

すなわち、離婚の慰謝料が仮に200万円の事例において、財産分与の際に、慰謝料分50万円が考慮されたにすぎないときには、残り150万円については別途慰謝料請求することができるということになります。

ただ、離婚の際に、「慰謝料」という形での請求にこだわると、お互いに相手方に離婚の責任があると主張して譲らず、紛争が長引くことになりかねません。そうなれば、お互いの今後の人生やお子様の健全な成長にとってもマイナスになってしまいます。そのため、離婚においてどちらかに有責性がある場合であっても、財産分与において慰謝料の要素を考慮した額で合意し、早期に解決することが必要な場合もあると思います。