田中史子のつぶやきコラム

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つぶやきコラム

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2018.3.22

精神病を理由とする離婚

民法770条1項4号は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」を離婚原因の一つとして挙げています。

しかし、夫(もしくは妻)が精神病にかかった場合、それだけですぐに離婚できるということではありません。「強度の精神病」であることと、「回復の見込みがない」ことが要件とされていますので、夫婦として精神的交流を図ることができず、夫婦で助け合っていくことができないほどの病状の不治の精神病にかかっていることが必要です。

最高裁判所は、上記条項により離婚を認めるためには、精神病にかかった夫(もしくは妻)の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的な方策を講じ、ある程度、今後の療養や生活等の見込みのついた上でなければ、離婚の請求は許されないと判断しています(昭和33年7月25日最高裁判所判決)。

したがって、精神病を理由として、裁判で離婚が認められるためには、離婚後に公的保護を受けて療養ができる態勢をととのえたり、経済面において、療養を継続できる十分な金銭的手当をする等の具体的な方策を講じる必要があります。

この点、精神病にかかっている妻に対し、夫から離婚訴訟を提起した事案(昭和42年11月29日東京地方裁判所判決)において、妻の病気は回復の見込みがないものとはいえないとして、精神病を理由としての離婚は認めませんでしたが、他の理由によって離婚を認めています。夫婦が交渉をもたなくなってからすでに約9年以上の歳月が経過し、夫は妻との婚姻継続意思を全く喪失していることや、現実問題として、もはや婚姻生活を円満に継続し得る見込はないこと等から、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)にあたるとして、離婚を認めたのです。

この判決は、上記最高裁の判決で言っていることは理想ではあるけれども、妻(もしくは夫)の今後の療養生活のための具体的な方策を講じて、その見込みがついた上でなければ離婚は許さないとすると、離婚訴訟で争っている妻(もしくは夫)の協力を得ることが困難な状況において、それを実行することは容易ではなく、最高裁の基準を満たさなければ離婚は許さないとまで解することには疑問があるとしています。

私も、最高裁の判決の基準を前提とすると、精神病を理由に、判決で離婚が認められる場合は、ほとんどなくなってしまうのではないかと思います。精神病だからと言って、直ちに離婚を認めることはもちろんできないでしょうが、最高裁の基準はもう少し緩和されてもよいのではないでしょうか。